卒業生からのメッセージ

活躍する先輩たち
Kanaho Kida
Message from Graduates

木田 奏帆

67期卒
ヴァイオリン専攻

大阪府大阪市 出身

現在の活動について

まずはオーケストラご入団おめでとうございます。お仕事(職種)について、現在の活動を交えてお聞かせください。

私は今年4月より、日本センチュリー交響楽団にヴィオラ奏者として入団しました。
今は、入団した日本センチュリー交響楽団での業務、具体的には月2・3回の主催公演と依頼公演をメインに活動しています。

音楽との出会いから堀音入学まで

音楽はいつ頃から始めましたか?また、そのきっかけは何ですか?

幼稚園の時からピアノを習っていたのですが、小学校4年生の時に、雑誌に掲載されていたオーケストラ特集を見て「ヴァイオリンを弾けたらカッコいいのでは?」と思い、親にお願いしてヴァイオリンを始めました。
ヴァイオリンを始める年齢としては、周りに比べるとだいぶ遅かったと思います。

堀音に入学したいと思ったのはいつ頃でしたか?
また、堀音を知ったきっかけや、その当時の入学への想いはどんなものでしたか?

堀音は母が見つけました。小学生の時に1度だけ「小学生・保護者対象スクールガイダンス」に参加しましたが、当時は「堀音なんて自分が行けるところではない」と思っていました。その後も、音楽大学には行きたいなと考えつつも、高校は普通科を受験するつもりでした。
ただ、中学3年生の時にヴァイオリンの先生(音楽科の高校出身)に「高校はどうするの?」「音楽高校は楽しいよ」と言われ、堀音を受けることにしました。

最終的に堀音に進路を決める前に、迷いや悩んだことはありましたか?

堀音を受験すること自体は迷わなかったです。
もともと、大学受験のためにソルフェージュの勉強などはしていたので、受けると決めた後はとにかくヴァイオリンの実技を頑張らないと、と思っていました。

堀音の受験を誰かに反対されましたか?

全然そんなことはなかったです。
私は大阪の中学校に通っていたのですが、先生方もすごく協力的で、受験前には高校に直接足を運んでくださり「いい学校だね」と背中を押してくれました。
もともと普通科の高校を受けるために通っていた塾の先生も応援してくれましたね。

堀音での経験について

実際に堀音に入学してみていかがでしたか?

入学後、まず周りのレベルに衝撃を受けました。
私がヴァイオリンを始めたのが遅かったのもあるのですが、高校入学まではコンクールなどを受けていなかったので、同年代の人たちがどんな感じなのか知らなかったんです。私は、入試の課題曲を必死に練習してなんとか堀音に入学したのに、他の子たちは課題曲よりさらに難しい曲に取り組んでいて、驚きました。また、オーケストラの初回授業に行われる初見大会では全然弾けず、ものすごくショックでした。
でもそんな時、先輩方が優しく自分の話を聞いてくださって救われたんです。周りの人たちが上手過ぎて「ヤバい…!」と焦ることが多かったですが、「とにかく練習するしかない!」という決心とともに私の高校生活が始まりました。

堀音での3年間で、堀音だから成長できた部分・培えた力はありますか?

私の学年は弦楽専攻生同士がものすごく仲良しで、みんなで遊びに行ったりしました。それだけでなく、試験前に弾き合い会をしたり、たくさんのことを教えてもらったり…そんな仲間を得ることができて良かったです。

そして、オーケストラの授業は本当にありがたかったですね。
先ほども言いましたが、私は高校入学まで他の人が演奏している姿を見る機会があまり無かったので、隣の席で演奏している先輩の姿をみて学ぶことがたくさんありました。そのうえ放課後まで練習に付き合っていただいたこともありました。

高校生活で想い出に残っている出来事があれば教えてください。

やはりヨーロッパ研修でしょうか。
まず、いつも自分が使っている楽器なのに、向こうでは音の鳴りかたが全然違うことにびっくりしました。

ヤナーチェク音楽院でのレッスンでは、(普段はチェコ語を話す)先生が一生懸命英語でお話ししてくださいました。通訳の方を介するよりも、先生から一対一で直接伝えられる方がよく理解できたように思います。その1年後、レッスンを担当してくださった先生が京都でコンサートをされたので、聴きに行きました。終演後のサイン会に参加すると、私のことを覚えてくださっていてすごく嬉しかったですね。

それから、ウィーン・カールス教会での演奏会も強く印象に残っています。人生で1番良かったと言っても過言ではないぐらいです。実際の教会の中に入り、空気感や文化を肌で感じることは、神様の存在を信じずにはいられない、またとない経験になりました。

堀音卒業後、どのタイミングでヴァイオリンからヴィオラに転向することに決めたのか、なぜ今の進路を選んだのか、理由やきっかけをお聞かせください。

もともと高校時代からヴィオラは好きだったのですが、大学3年のある日、ヴィオラの方が楽しいことに気づいたんです。その瞬間「ヴィオラをもっと勉強しよう!」と思い立ち、その日のうちに当時師事していた先生に連絡しました。その先生をとても驚かせてしまいましたが、最終的にはヴィオラの先生を紹介していただくことが出来ました。それから大学卒業までヴァイオリンを続けましたが、その間にヴィオラで大学院を受験しました。

そもそもヴァイオリンを始めた時からずっとオーケストラに入りたいと思っていましたし、子どもの頃はオーケストラに入団するものだと信じ切っていました。もともと落ち込みやすい性格ではないのですが、高校入学時にたくさん挫折を経験したので、今のオーケストラに合格するまでは「(不合格で、失敗で)ショックを受けている暇があるのならもっと有効に使おう、練習しよう」と心掛けてきました。
とはいえ、実際厳しいこともたくさんありましたが…。オーディションを受けなければ、オーケストラに入団する可能性も生まれないですし、悩む暇があるなら行動あるのみでしたね。

参考までに、堀音でもう少しこれがあればよかったと思うことがあればお聞かせください。

強いて挙げるなら、室内楽をもう少し経験しておきたかったです。もちろん、学年ごとに各専攻の人数が異なるので難しいことは承知しています。しかしヴァイオリン専攻であれば、弦楽四重奏は絶対に避けては通れない道なので…。

ほかには、大人と一緒に演奏する機会がもう少しあったら良かったかもしれません。この学校には素晴らしい卒業生がたくさんいらっしゃいます。例えば数ヶ月に1度、経験豊富な方々と室内楽やオーケストラなど一緒に演奏することで、学べることがきっとあるのではないでしょうか。

将来の抱負/夢について

ご自身の今後の抱負や将来の夢があれば、お聞かせください。

これからはオーケストラのみならず、室内楽にも力を入れて取り組んでいきたいです。また、ゆくゆくは「教える」仕事にも挑戦したいと思っています。
もちろん個人レッスンもしたいのですが、それだけではなく、先ほどお話ししたような、オーケストラの中で後進をサポートするような取り組みも出来ればいいな…と考えています。

小学生・中学生へのメッセージ

音楽を志す小学生・中学生、そして後輩である堀音生へのメッセージ、アドバイスがあればお願いします。

今の自分からみなさんに言えるのは「学校の成績はあまり関係ない」ということです。私は、高校・大学と実技の成績はあまり良くありませんでした。むしろ、平均点を下回ることが多かったんです。それなりに落ち込むこともありましたが「技術だけじゃ周りと同じ立場に立てない」と思い、学生の間に様々な場所に顔を出し、人脈を広げました。色々な方と関わるようにしたことで、今の自分があります。

そして昔の自分に何か伝えることができるなら「どうしても目の前のことに囚われてしまうけれども、それよりもっと大切なことがあるよ」と言いたいですね。目の前のことに一喜一憂することも大事だけれど、もっと長いスパンで合理的に思考をシフトさせることも重要ではないかと思います。

堀音は周りに音楽をしている人たちばっかりだったので、様々な話ができました。それは私にとって非常に大きかったです。音楽にまつわる、色々な物事を知るきっかけとなりました。
だからこそ、挫けそうになることがあっても、堀音生にはめげずに頑張ってほしいと思います。普通の学校では一人ぼっちになってしまう状況でも、堀音では周りに助けを求める環境がありますし、ぜひそうしてほしいのです。自分が悩んでいることは、きっと周囲も同じように悩んでいます。悩みを誰かと共有できるこの場所は、貴重な環境です。

試験前に弾き合い会をしたり、
たくさんのことを教えてもらったり…
そんな仲間を得ることができて良かったです。

木田 奏帆

Kanaho Kida

略歴


京都市立京都堀川音楽高校、京都市立芸術大学ヴァイオリン専攻卒業、東京藝術大学大学院修士課程ヴィオラ専攻修了。第27回日本クラシック音楽コンクールアンサンブル部門第5位等多数受賞。2021年無伴奏リサイタルを開催。これまでにヴァイオリンを永ノ尾文江、池川章子、西尾恵子、四方恭子、泉原隆志、ヴィオラを山本由美子、市坪俊彦、鈴木康浩の各氏に師事。ソロの他室内楽やオーケストラでも精力的に活動しており、様々なリサイタルシリーズへの出演を行っている。日本センチュリー交響楽団ヴィオラ奏者。

インタビュー実施日:2023年5月11日 現在の情報