卒業生からのメッセージ

活躍する先輩たち
Chika Hayase
Message from Graduates

早瀬 千賀

64期卒
ヴァイオリン専攻

滋賀県栗東市 出身

現在の活動について

現在通っている学校や活動についてお聞かせください。

現在は、オーストリアのウィーン国立音楽大学の第2課程(日本の修士課程に相当)に在籍しています。
また、一昨年と昨年はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の「サマーアカデミー」という若い学生向けのオーケストラやオペラのプロジェクトにも参加し、同世代の優秀な人たちと一緒に過ごしました。

それはコロナ禍の中でも開催されたんですか?

はい、開催されました。昨年の8月に参加した際は「マスクの着用」や「アカデミーの参加者同士以外はなるべく接触しない」などの対策をしながらの開催でした。また、期間中は定期的に検査を受け、常に全員が陰性であることを確認しながら行われました。
ただ、昨年9月に予定されていたオペラについては、私たちに直接関わっていなかったものの関係者内で感染者が出たため今年の2月に延期され、延期後の2月もウィーンがロックダウン中だったので無観客で収録しました。

堀音卒業後、なぜ今の進路を選んだのか、理由やきっかけをお聞かせください。

まず、堀音卒業後は京都市立芸術大学に進学しました。
京芸を選んだ1番の理由は、習いたい先生がいたからです。
その上、兄弟がいるので、家から通える範囲の大学や公立の大学の方が金銭的負担が少なくて済む・・・などのメリットもありました。

それから、留学を考えたきっかけは高校の研修旅行でした。
研修旅行で本場の音楽や空気を体感したことで「大学卒業後は留学したい」と思うようになりました。
その後しばらくは、漠然と「留学するならドイツ語圏がいいかな?」ぐらいにしか考えていなかったのですが、大学4年の時に参加した講習会で習った先生がウィーン国立音大の先生で、またその時の街の雰囲気や音楽に触れていられる環境(オペラ座やコンサートホールも30分圏内!)がしっくりきたので、ウィーン国立音大に留学することを決めました。
ちなみに、今もその先生に習っています。

では、日本の大学院を経てから留学する、という考えはなかったのですか?
また、留学するに当たって誰かに反対されることなどはなかったですか?

日本の大学院は全然考えなかったです。
研修旅行から帰ってきた後、家族は私が「すごく良かった!」「ヨーロッパに行きたい!」と楽しそうに話す様子を見ていたこともあってか、快く応援してくれました。

音楽との出会いから堀音入学まで

音楽はいつ頃から始めましたか?また、そのきっかけは何ですか?

まず、2歳からリトミックを始めました。
それからCDデッキをおもちゃにして遊ぶようになり、たまたま家にあったベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番《春》を気に入ってよく聴いていたそうです。その後しばらくすると、今度は「私もこれやりたい」と言うようになったみたいです。

そして、ヴァイオリンを持ち始めたのは3歳半のときです。
習う前は、どうしてもヴァイオリンがやりたくて、おもちゃのウクレレに棒を当てヴァイオリンを弾く真似をして遊んでいました。両親はそんな姿を見て「この子はどうしてもヴァイオリンがやりたいのだな」と思ったそうです。でも、ヴァイオリンがどういうものか、どのように弾くのかを知ったきっかけは不明で、私の記憶にもありませんし、両親もこれといった心当たりが無いそうでずっと分からないままなんです…。

その後は、新しい曲が弾けるようになることが楽しく、ずっとヴァイオリンを続けていました。
曲が上がりになるとシールをもらえたり、難しい曲を演奏できるようになったりするのが嬉しかったですね。

堀音に入学したいと思ったのは、いつ頃でしたか?

堀音受験を決めたのは中学2年の頃なので、他のヴァイオリンの子よりは遅かったと思います。
ですが、堀音の小学生向けスクールガイダンスには参加していました。その時に見学したオーケストラが「すごく楽しそうだな」とは思っていましたが、普通科へ進学しようか高校から音楽専門の方に進むか迷っていました。

ではなぜ方向転換して、堀音に進学しようと考えたのでしょうか?

中学生の時は周りに音楽をしている同級生はおらず、ましてやヴァイオリンの話なんてできませんでした。中学校には話の合う人がいないなと思い「もし音楽科のある高校に行けば、音楽のことをたくさん友達と話し合って楽しい高校生活が過ごせるかも!」って思ったことがきっかけです。
小学5年から音楽教室でソルフェージュを習っていたのですが、週1回ソルフェージュに通う際に、ヴァイオリンやピアノをやっている人たちと話せるのが楽しかったんです。その経験が影響していると思います。

私は滋賀県に住んでいたので地元の公立高校とも迷いましたが、音楽高校に進学するなら”オーケストラ”ができる堀音、と決めていました。

それから、当時レッスンしていただいていたのが堀音で長く教えておられる村瀬理子先生で、門下の先輩たちが楽しそうにしていたのも決め手でした。

堀音の受験を誰かに反対されましたか?

堀音への進学を反対する人は特にいなかったです。
中学校の先生には「『聴音』とかあるけど大丈夫?」とは聞かれましたけど…。

堀音での経験について

堀音に入学してみて、進路を決める際の迷いはどうなりましたか?

実際に堀音へ入学してみて「「「絶対的に良かった!」」」と思っています。
いつでも周りと音楽の話ができますし、みんな音楽が大好きで、そのことを大前提に音楽の話ができる安心感が大きかったです。みんな音楽という同じ目標に向かっているので、楽しい話も時には音楽特有の悩みも共有することができました。

もしも地元の高校に進学していれば、自分の音楽面や精神面に刺激を受けることはなく、ただただ自分のペースで音楽を続けていたのだろうと思います。同じ音楽をやっていても、アプローチが違ったり自分と違う感性を持った人がいるなんて知ることはなかったですね。

高校生活での思い出を教えてください。

やっぱり1番の思い出は、3年間オーケストラを頑張ったことですね。
楽譜を用意したり、セッティングをしたり…。自分が知らなかった裏側についても知ることができ、より本番に熱が入るようになりました。
また、中学校まではヴァイオリンのことしか知らなかったのですが、オーケストラには他の楽器もいて、その楽器を友達が演奏していることでより親近感がわくようになりました。友達から教えてもらったことを踏まえながらオーケストラスコアを読むことで、新たな発見につながったりもしました。

また、ヨーロッパ研修旅行も思い出深いです。
1番最初に足を踏み入れたプラハの夜景を見た時に「ここはヨーロッパだ!」と思ったことを強く覚えています。それから、現地でコンサートをした際「こういう経験をするために音楽をやっているんだな」と、ひしひしと感じました。これがキッカケで「音楽をずっとずっと続けていきたい」と思うようになりました。

それから、これは高校生活全般に言えるのですが…
私たちの学年は特に個性が強くエネルギッシュで、そんな同級生たちと切磋琢磨し、怖がらず色々なことに挑戦しながら突き進むことができました。
だからこそ、どのようにすればもっと調和・共有できるのか考えたり、自分の立ち位置だったり…と”周り”について考え、勉強することができました。
これは、時には暴走してしまうこともありましたが、やりたいこと全てに納得できるまで挑戦させてもらえたからこそだと思います。もちろん、その当時の自分が正しく受け取れていたかどうかは別として「もう少し控えた方がいい」「〜した方がいい」とアドバイスを頂いたこともあります。ただ、今になって思うと否定されることはなかったので、同級生にも先生方にも遠慮せずにのびのびと過ごすことができました。個性を最大限に引き出してくれる環境で、温かく見守られながら、先生方に遊ばせてもらっていたのだと思います。

高校生活で印象に残っていることはありますか?

担任の先生から折に触れて「人間力・音楽力・学力」と言われていたのが印象に残っています。舞台上で演奏した時に出てくるものだけではなく、それ以外も大切にしようと思いました。

今現在も役立っている高校生活での経験等を教えてください。

先ほどお話ししたことと重なりますが、集団の中でどういう立ち振る舞いが必要なのか知ることができました。
また、個性を抑えこんで調和させるのではなく、自分の長所だけではなく短所もしっかり分かった上で、どちらも生かして調和させた方が良いんだなと感じました。
自分自身の良さや苦手については堀音にいる時に知ることができました。留学してから、やはりヨーロッパの人たちは個性が強いなと感じています。でも、だからといって自分自身の性格をそこに合わせる必要はなく、日本で育ったことこそが自分の個性なのでそれを出していけば問題ないんだ、と日々思っています。

それから、ソルフェージュや音楽理論、音楽史を高校時代にしっかり学習できたことは大きいです。早くから勉強できた分、その知識を自分の演奏に生かしたり、こんな知識が必要だという意識を早くに持つことができました。こういった知識は1日勉強すればすぐ完成するものではありませんので、何回も触れて復習することで、いざという時に「あれをやればいいんだ」「これを調べればいいんだ」と対応することができます。

将来の抱負/夢について

ご自身の今後の抱負や将来の夢があれば、お聞かせください。

ずっとヴァイオリンを弾き続け、音楽を絶やさない人生を送りたいです。

近い将来の目標としては、ヨーロッパのオーケストラの中で演奏してみたいです。
卒業後、帰国する・しないなどの希望はまだ具体的にはありません。その時の成り行きや状況に任せてみたいと思っています。

また、自分で演奏会を行う際には、自身の演奏をお客様に聴いていただくことで、それまで知らなかった作品に触れたり「聴いて良かった」と思ってもらうことも大切にしつつ、演奏会を開催することで、そこに集まったお客様同士の交流が生まれるなどのコミュニティーとしての機会を提供できればと思い描いています。

小学生・中学生へのメッセージ

音楽を志す小学生・中学生へのメッセージ、アドバイスがあればお願いします。

やっぱり「基礎は大切」ということです。
基礎練習は大変ですし、イヤなことも多く、先生から指摘されることもたくさんあると思いますが、やはり言われるだけのことはあると思います。土台がしっかりしていると自分の中でも安心して弾けるようになりますし、しっかり基礎を積み上げることで本番が楽しめるのだと思います。

ずっとヴァイオリンを弾き続け、
音楽を絶やさない人生を送りたいです。

早瀬 千賀

Chika Hayase

略歴

京都市立京都堀川音楽高校、京都市立芸術大学卒業。ウイーン国立音楽大学第一課程修了。第65回、第66回全日本学生音楽コンクール大阪大会入選。第16回日本演奏家コンクール第3位。2018年第20回エウテルペ国際コンクールにて第1位、”Morena Mazzilli” 賞を受賞、スペイン・レオンにて優勝者リサイタルを行う。2019年第33回京都芸術祭音楽部門にて京都市長賞受賞。2019年、2020年ウィーンフィルハーモニー管弦楽団サマーアカデミーのオーケストラ/オペラプロジェクトに参加。現在、ウィーン国立音楽大学第二課程ソロ科在籍。これまでに、村瀬理子氏、四方恭子氏、エドワード・ツェンコフスキ氏に師事。

インタビュー実施日:2021年7月26日 現在の情報